利回り6%物件は儲かるのか?
利回り6%の新築物件は儲かるのか
大手不動産検索サイトで新築収益1棟マンション・アパートを検索すると、利回り4%~8%の幅広い物件がヒットします。ボリュームゾーンは5~6%です。では、ボリュームゾーンである利回り6%物件のキャッシュフローは実際どのくらいなのか検証してみます。
実在する物件で利回り6%を検証
概要書を取り寄せてみた
新築1棟アパートの概要書を取り寄せてみました。物件の内容は以下の通りです。
物件概要 |
レントロール/管理費込 |
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所在地 | 東京都23区内 | 101 | 77,000円 | |
駅徒歩 | ○○駅徒歩14分 | 102 | 76,000円 | |
土地 | 145㎡ | 103 | 77,000円 | |
建物 | 木造3階建て(181.38㎡) | 201 | 79,000円 | |
総戸数 | 9戸 | 202 | 78,000円 | |
間取り | 1R(3階のみロフト付) | 203 | 79,000円 | |
専有面積 | 全て20.1㎡ | 301(ロフト付) | 82,000円 | |
価格 13,800万円 | 302(ロフト付) | 81,000円 | ||
303(ロフト付) | 82,000円 | |||
月合計 | 711,000円 | |||
利回り | 6.18% | 年合計 | 8,532,000円 |
物件概要書 その他の記載事項
■劣化対策等級3取得予定
設備バス・トイレ別/浴室乾燥機/追い炊き/独立洗面台/2口ガスコンロ/モニター付インターフォン/エアコン/照明/温水洗浄便座/防犯カメラ/宅配ボックス/Wi-Fi/ロフト(3階のみ) |
【利回りについて】※このように小さな文字で記載があります。
- 年間予定収入は満室時における1年間の予定賃料収入です(共益費含む)
- 予定利回りは、年間予定賃料収入の物件取得単価に対するわりあいです。
- 予定賃料収入を保証するものではありません。
- 予定利回りは、表面利回り(公租公課・共益費その他当該物件を維持するために必要な費用の控除前のもの)です。
不動産ローンのシミュレーション
融資条件融資金額:13,800万円 |
初年度の収支
表面利回りのみで計算してみる
表面利回り
概要書は表面利回りです。単純に「年間賃料」÷「物件価格」で計算できます。 1万円以下は四捨五入とします。 年間賃料853万円÷13800万=0.06181 確かに6.18%です。1室平均は7.9万円です。
表面利回り上の年間CF
年間賃料853万円-返済金額572万円=281万円
表面的には十分なCF(キャッシュフロー)が出ているように見えます。
実質利回りの計算
しかし、収益不動産の運営には諸経費がかかります。 したがって本当のCFは、(「年間賃料」-「諸経費」)÷「物件価格」で求められます。 諸経費の主なものは
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それぞれの費用は業者さんによって違いがあるため、一概には言えませんが、ざっくり入れてみましょう。
- 固定資産税 約40万円(ざっくりの数字です)
- 管理費(5%として) 約43万円/年
- 日常清掃 1万円(週1回)/月
- 定期点検 3万円/年
- 火災保険 8万円/年
- 修繕費 初年度なので0円とします。
諸経費を含む実質利回り(年間賃料853万円-諸経費95万円)÷13800万円=5.5% |
初年度年間CF 年間賃料853万円-諸経費95万円-返済572万円=186万円 |
実質利回り5.5%で年間CFは186万円。悪い数字ではなさそうです。
5年後の賃料はどうなるか?
新築時には「新築プレミアム」という恩恵があり、物件のポテンシャル以上の家賃設定が可能です。周辺相場の10~20%高く貸すことができます。 しかし、5年ほど経過すると中古物件の仲間入りをして、「新築プレミアム」は終了。家賃は周辺と同等程度になります。
大手検索サイトで5年後の周辺賃料を調べてみる
構造は全て木造です。
サンプル1 | サンプル2 | サンプル3 | |
駅徒歩 | 14分 | 14分 | 15分 |
築年 | 5年 | 7年 | 7年 |
専有面積 | 21.02㎡ | 22.19㎡ | 20.75㎡ |
家賃 | 74000円 | 67000円 | 72000円 |
設備の差 | オートロックがある。追い炊き・宅配ボックスはない | 追い炊き・宅配ボックスはない | 追い炊き・宅配ボックスはない |
5年目以降の適正家賃
サンプル1では、総戸数11戸のうち5室が空室。オートロックがあるが74,000円では高いことが分かる。サンプル2の67,000円は募集後、約1ケ月で成約。サンプル3は、総戸数8戸のうち空2室。3か月間募集中。
購入検討物件は設備が充実している点をプラス評価として適正家賃は7万円と査定。チャレンジ価格で7.2万円。
新築時の平均家賃は7.9万円。新築プレミアムがなくなり10%超の下落。
年間満室賃料は、【1室7万円×9室×12=756万円】
5年目以降の収支
■5年目以降の収支計算
年間CF 年間満室賃料756万円-諸経費95万円-返済572万円=89万円 |
■より慎重な収支計算
満室が続いても、退去時には次の入居者さんが見つかり、契約するまでには最短2週間かかります。2カ月程度かかることも少なくありません。より固く計算するなら「空室率」を10%考慮します。
年間CF 年間満室賃料756万円-空室率10%75万円-諸経費95万円-返済572万円=14万円 |
築10~20年の収支
サンプルの3室を見てみましょう
サンプルA | サンプルB | サンプルC | |
駅徒歩 | 16分 | 14分 | 15分 |
築年 | 築16年 | 築20年 | 築17年 |
専有面積 | 23.71㎡ | 20.24㎡ | 19.65㎡ |
家賃(管理費込) | 6.2万円 | 6.2万円 | 6.0万円 |
6.2万円を適正家賃とします。
また諸経費のうち修繕費は、経年とともに高くなりますので10年目以降では20万円/年とします。
■10年目以降の収支計算
年間CF 年間満室賃料670万円-諸経費115万円-返済572万円=▲17万円 |
■より固い収支計算
空室率10%を加味する
年間CF 年間満室賃料670万円-空室率10%72万円-諸経費115万円-返済572万円=▲89万円 |
まとめ
いかがでしょうか。表面利回り6.18%の実態です。新築・築浅期間は180万円を超えるCFがありましたが、築10年以降は厳しい戦いになります。
結論は、「買わない方がいい物件」です。 駅から5分以内ならありかもしれませんが、駅徒歩14分となると10年目以降の運営は難しいと判断しました。
また、物件購入時には売買の諸経費がかかります。仲介手数料・固定資産税清算金・登記費用・司法書士への報酬・印紙代などです。概ね売買価格の7%ですので、フルローンであっても966万円(13,800万×7%)のキャッシュが必要です。
この手出しのキャッシュはなるべく早く回収したいですが、この数字だと回収自体難しいかもしれません。